開業時トラブル3

こういう事例は少ないと地区医師会や弁護士から言われました。門前薬局とのトラブルです。診療所→薬局型の迷惑行為は多く苦情も出やすいのですが、反対の薬局→診療所のパターンは少ないとのことでした。

開業後しばらくは慣れない電子カルテ処方、小児量の処方ということもあり薬局から問い合わせが多いのも仕方がないか…と考えていました。ただし1人処方出すと3回電話がかかってきました。電話はコードレスではなかったので、いったん電話にでると診察室の椅子に座れず、診察が回りません。

しかしながらある事件からこの薬局はおかしいのでは?と思うようになりました。小児の患者様ですが、感冒としてPL顆粒を処方したところ、1w後に再診。なんと肺炎になっていました。しかも「PL顆粒は効果ないので飲むな」と門前薬局で指導されたとのことでした。PL顆粒を飲んだから、飲まなかったから肺炎になるならないということはないと思います。このことがなければ勝手に薬局で服薬指導をされている、しかも「この処方は効果ない」と言っていることが判明しました。おそらく一人ではないでしょう。

そこでこの薬局の元締めの企業に直接連絡し、この事実をお話しし、こういうことは止めてほしいと訴えました。

ところが開業年度の冬、インフルエンザシーズンに6か月の乳児ではなく、その両親が二人ともインフルにかかってしまい、6か月の乳児はインフル陰性でした。しかしこの状況では乳児がインフルにかかる可能性が高いためタミフルの予防投薬を処方しました。ところが「この処方は出せない。文句があるなら中外製薬に言ってくれ」ともし副作用でた場合はこちらで全責任をもつので出してほしい、とまで言いましたが拒否られました。そこで中外製薬に電話しタミフルの扱いについてこの次第を説明しました。「医師が責任もつため出してほしいという裁量も通用しないほど添付文書は絶対的であり処方できないものなのか?」の問い合わせに「そこまでの拘束力はない」との返答でした。

これも元締めの企業に直接連絡し、この事実をお話しし、こういうことは止めてほしいと訴えました。

これ以降もこちらのやり方に対してことあるごとに抵抗、非難が繰り返し行われました。最初は仲良くやっていきたいと考えていましたが、その事例をノートにこまごまと記録し、50回を超えたところで地区医師会、弁護士に連絡し、別に損害賠償とかそんな話ではなくこちらの裁量を認めてほしい、こちらにも処方量の間違いはあるためそこをチェックしてもらっていることは感謝している。そういう希望で調整を依頼しました。

 

これ以降は尋常でない電話確認、患者様からの薬局に対する苦情、薬局からの処方内容に対する非難はなりを潜めました。

しかし勤務医時代こんなことは一度もありませんでした。しょせん病院という狭い世界でしか生きていなかったのだと実感しました。なんでも起きうる、起きた時にどう対応するか、その問題をどう処理するか、方法やコスト、人間関係等を考慮し最善の方法を探し出す。

開業の本質は病院から外の世界に出て、教わってきた医療の原則など通用しない、何でもありの世の中でトラブルと向き合うこと。